この記事では「側臥位一般操作」について記載していく。
側臥位手技は「背臥位・伏臥位手技の良いとこどり」をしているので、共通項が多い(なので、手技に迷ったら背臥位・伏臥位手技を思い出すと良い)。
側臥位は妊婦や高齢者にも活用できる利用頻度の高い手技なのでぜひマスターすること。
側臥位手技の手順は以下の通り。
- 下肢へのアプローチ
- 大殿筋への母指圧or手根圧迫
- 脊柱起立筋(棘筋)の母指振幅圧
- 体側に手を乗せて「上腕把握(+三頭筋圧迫)」と「腕橈骨筋圧迫」
- 前方で手を組んでもらい「肩甲骨内側縁」「肩甲骨」「三角筋正中部」への刺激
- 「母指での腋窩圧迫」をしながら肩甲帯を「挙上下制」「前後回転」
- 胸鎖乳突筋(本来は7・8が逆だが、立ち位置の関係上、バンザイ缺盆より先に実施することにした)
- バンザイ缺盆
- 頸椎二線揉捏
- 頸椎2線揉捏(揃え母指) オプションで「包丁研ぎ」
- 側頭部に対する「4指揉捏」と「両手手掌圧迫」
- 肩甲挙筋ストレッチ+胸椎椎間関節への刺激(伏臥位による腰椎刺激のオプションも記載)
側臥位でのポイントは以下の通り。
- 枕を使う(頸椎側屈の予防)
- 浪越と異なり、体幹横軸はベッドと垂直に近い状態でアプローチ(浪越は若干前傾位)。
この記事では右側臥位を想定して施行していく。

側臥位時の下肢は、「ベッド側(左側)が軽度屈曲位」「天井側(右側)が屈曲位」となるようなポジショニングとする。
下肢へのアプローチ(右側臥位)
ベッド側下肢へのアプローチ
大腿部
左手で「右下腿内側(ベッド側下肢)」へ触れつつ、右手根を用いて「右大腿内転筋群」を近位⇒遠位へテンポよく圧迫していく(振幅要素は無し)。
↓
下腿部
右大腿遠位部まで圧迫したら、両手で「右下腿(内側から背側の領域を把握することになる)」を把握振幅していく(母指は下腿三頭筋の正中へ平行にに揃えて把握振幅していく)。
天井側下肢へのアプローチ
大腿部
次に「左大腿筋膜張筋(天井側TFL)」を左前腕回内させつつ近位⇒遠位へ圧迫していく(左手は、膝より遠位へ触れておいても良いし、難しければフリーでもOK)。
※PTはTFLのラインにて、尾内側へ向かって座る。
※PTは腹側に覆いかぶさりつつ肘を張ることで、前腕長軸がTFLに垂直となるようにする(前腕が垂直になっていれば、その前腕の延長上に体幹が無くても、つまりは背側に体幹が残存していても圧迫できる。これは、ウィルワンの「側臥位・天井側外側ハムストの手根圧迫」をイメージすれば分かりやすいか?)考えは似ている
↓
下腿部
左下腿に関しても同様に把握振幅していく(天井側下腿は外側~内側の領域を把握することになる)。
オプションとして、大腿筋膜張筋へのアプローチ。
立ち位置を(背側から)腹側へ変える必要があるので、あくまでオプションとなるが、メチャクチャ気持ち良い。PTは「大腿長軸上の尾側」に位置し、両手で大腿の前後をサンドするように把握する。その状態で、母指を寝かせて「シッカリと頭側へ皮膚を詰めてダブリを取った状態」で頭尾側へ振幅する。
あるいは肘を使う。菅沼流に「肘を手前に引いて、そのダブリ分だけ押し出すように圧を加える」という方法。
大殿筋への母指圧or手根圧迫
ここは振幅ではなく圧迫を用いる。
手関節を背屈して皮膚を詰めつつ以下などの部位を刺激する。
- 仙骨のキワ(母指圧迫)
- 梨状筋(母指圧迫)
- 坐骨結節付近(手根圧迫)これは手根がおススメ。反対手をカウンターとして腸骨稜へ引っ掛けた状態で手根圧迫すると安定する。
脊柱起立筋(棘筋)の母指振幅圧
この時のポジショニングも「浪越と異なり、体幹横軸はベッドと垂直に近い」というのがポイントとなる。これをキープしながら振幅圧を加えるためにPTは「手関節を背屈把握」により「皮膚を中心に詰めつつ、体が前傾しないよう修正する」というのが重要となる。しっかり把握で上記をキメれたら、そこで振幅する。
尾側(仙骨裂孔)⇒頭側(肩甲骨上角当たり)の棘筋に対して、揃え母指で実施。
肩甲骨下角に頭側手が当たるくらいまで上行したら、肩甲骨を頭尾側から挟む形で把握して把握しつ、棘筋へ振幅刺激を加える(これなら肩甲骨が邪魔にならない)。
体側に手を乗せて「上腕把握(+三頭筋圧迫)」と「腕橈骨筋圧迫」
側臥位で天井側の体側(左上肢)へ乗せる。
この状態で、上腕を把握しつつ母指で三頭筋を振幅母指圧(両手揃え母指圧)する。
特に上腕三頭筋の「腱」は天井・清冷淵があり凄く気持ちが良いので刺激して緩めてあげる。
前方で手を組んでもらい「母指による肩甲骨剥がし」+α(右側臥位)
PTは肩甲骨の背側に位置し、腹側に向かって座る(背側にも腹側にも向かない)。
以下のように、前方で手を組んでもらい「天井側上肢」を立ててもらう。

※ただし患者が脱力できないようなら、この手技は採用しない。
上記ポジションにて、PTは以下のポジションをとる。
「頭側手(右手)の水かき部」を肩上部に当てる(母指が背側へ来るように)。
「尾側手(右手)の水かき部」を腋窩後壁に当てる(4指は腋窩に入る。母指は背側に来るように)。
上記の状態にて、肩甲骨内側縁(肩甲骨の裏側)に両母指を入れ込むようにして母指振幅圧迫を加える(つまり母指による肩甲骨剥がし)。
もちろん体幹が前傾しないように、手関節を背屈させて皮膚を詰めるこをと忘れないように!
上記な肢位のまま、肩甲骨⇒三角筋正中に対して以下などを実施していく
- 肩甲棘のラインに沿って母指圧迫
- 棘下窩を満遍なく母指圧する
- 天宗を刺激
- 三角筋正中を把握して包み込みながら母指振幅圧迫
「母指での腋窩圧迫」をしながら肩甲帯の「挙上下制」「前後回転」
前述の「対側へ上肢を乗せた状態」のまま、PTは背部に位置し、頭側(腋窩)に向く。
PTは、三角筋を腹側・背側から包み込むようにしつつ両母指を腋窩に当てる。
このまま、母指で腋窩を刺激しつつ「肩甲帯を挙上して肩をツメる⇔戻す」
次に、母指で腋窩を刺激しつつ「前回し」や「後回し」にクルクル肩関節を回す(特に不良姿勢を矯正するような背側方向への回転は重要)。
特に猫背の人には、後回しが効果的。
※「腋窩を刺激する」といっても、過敏な部分なので弱圧にすること!!
胸鎖乳突筋
※PTは(前述した手技のまま)頭側へ向かって座る。
PT腹側手(右手)で、左肩甲帯を下制方向へ軽く触れつつ、
PT背側手(左手)の母指で(背部に4指を十分密着させつつ)胸鎖乳突筋をを背側へ引き剥がすように揉捏していく。
中山先生は、腹側手で側頭部をベッドへ軽く押し付けつつ、背側手で胸鎖乳突筋を操作する。この手技のメリットは頭が動きにくい。
一方で「肩甲骨を下制する方法」は「胸鎖乳突筋を伸張させた状態で操作」をすることが出来る。
バンザイ缺盆(右側臥位)
PTは患者の頭側(頭頂部)に座りなおす(尾側に向く)。
PT腹側手(右手)で、右手首を把持し「上肢挙上位(十分バンザイできなければ、屈曲角度を弱めてもOK。例えば160°屈曲位など)」にする。
PT背側手(左手)の母指を、缺盆(鎖骨上窩で、胸鎖乳突筋より外側)へ当てる。
この状態で、上肢を頭側へ引き上げる(これにより、必然的に缺盆部への母指圧が強まる。
この原理は「背臥位での折母指腋窩刺激時の上肢牽引利用」と同じ。
吹野さん、メチャクチャ「体の側面」が伸ばされて気持ち良いと言っていた。
「肩甲挙筋ストレッチ」+「椎間分節的アプローチ」
右側臥位で、PTは頭背側に位置し、尾側へ向かってポジショニング。
手順①:ポジショニング
患者の左上肢を「肩関節外転(辛ければ肩甲骨面挙上)」してもらう(肘関節は必ず屈曲位にする(肘関節がプラプラして不安定だから)。
そして「上記の肩関節外転位」+体幹が前方に倒れないようなカウンター」を目的にPTは腹側手で腋窩(胸郭の外腹側面)へ手を当てつつ「患者の上腕に、自身の前腕が添うようにピタッとくっつけて患者上肢を安定化」させる。
そうすると、ちょうど「PT肘窩が患者肘(屈曲した肘)にかっぽりハマる感じになる(レゴのブロックのような感じ)。

上記は、肩関節を伸展しすぎだが、こんな感じのイメージ。
手順②:可動
前述したポジションは「肩甲骨の外転・上方回旋位」となるのだが、そこから「背側手の小指球」を肩甲骨上角に引っ掛けて、肩甲骨を(外転・上方回旋位のまま)尾側へ圧することで肩甲挙筋をストレッチする。
この時、PT腹側手(患者肩関節を屈曲・外転位に保持しつつ、腹側へ体幹が倒れないようカウンターしている手)の「患者上腕に密着させているPT前腕」を若干背側へ引くことで「肩関節の更なる屈曲・外転、天井側胸郭の拡張」と連動させてあげると効果絶大(更に上腕を耳に近づけてあげるようなイメージ)。
手順③:中部or下部胸椎までストレッチ
手順②(肩甲挙筋ストレッチ)が終われば、そのまま棘筋に沿って小指球を腹尾側方向へ刺激しつつ(椎間関節への刺激・胸郭拡張刺激も加えつつ)、中部 or 下部胸椎までテンポよく分節的な刺激を加えていく。
「手順②③」は、必ず押圧後は戻してあげることが重要となる。
押しっぱなしで次の刺激を加えないよう、先生より指導を受けたので十分注意する。
この手技が可能なのは胸椎までで、腰椎は生理的前湾があるため別の手技を使う。
(おまけ)伏臥位による腰椎分節刺激
前述したアプローチは「腰椎には非適応である」と記載した。
でもって腰部への分節刺激を加えるのは「伏臥位」となる。
方法は以下の通り(左棘筋・左椎間関節への刺激を想定)。
手順①
PTはアプローチする側(左側)の股関節付近へ内側へ向いて座る。
手順②
尾側手(右手)で大腿部をすくい上げる様に把持しつつ、
頭側手(左手)を前腕回外位にしながら左棘筋へ母指を当てる(水かき部分~4指は外側の胸郭の丸みに沿ってペタリと手掌を当てつつ接触させる)。
手順③
体幹を左側屈させることで、尾側手ですくっている左大腿部を「持ち上げつつ+手前に引きつつ(=股関節伸展+外転しつつ)」、連鎖で伸展した腰部に対して(体幹左側屈した重心移動を利用して)母指で棘筋(+深部にある椎間関節)に対して腹側(+若干頭側)の刺激を入れる。
頸椎2線揉捏
※PTは(前述した手技のまま)頭側(頭頂部)に位置する(尾側へ向かって座る)。
PT腹側手(右手)で、左肩甲帯を下制方向へ軽く触れつつ、
PT背側手(左手)は首根っこを掴むように優しくホールド。
そのまま、左母指で「首の付け根(C7くらい)から、「左椎弓の椎間」を1椎1椎離開させるように尾・内側へ向かって振幅刺激を加える。
尾側⇒頭側へ、どんどん刺激を加えていく。
上部頸椎は(尾側へ向いた状態から)頭側へ向かった状態へPTはスイッチし、離開振幅を継続して加えていく。
頸椎2線揉捏(揃え母指) オプションで「包丁研ぎ」(右側臥位を想定)
PTは頸部付近に(頭側へ向かって)位置する。
PTは「揃え母指(重ね母指じゃない)」にして、頸の付け根(C7くらい)から「左椎弓の椎間」に当てる。
※背側手(左手)の4指はしっかり首根っこをホールド(前述した手技と同様に)。
※腹側手(右手)の4指は鎖骨に当たって不快にならないよう、ほとんど接触しないくらいな感じで前頸部に触れる。
この状態で、PTは手前に引いて皮膚のダブリを取った分だけ、尾側へ押し込むことで振幅を加える。これも前述した手技と同様に、椎間を離開させるような刺激を加える(イメージとしては生井先生の包丁研ぎ手技な感じ)。
何度かスコップ堀をしたら、椎弓をC7から頭側へ徐々に移動させていく(生井先生の包丁研ぎでも応用可能)。
上記を「分節的アプローチ」を意識して実施するのもOK
上記記事と重複するが補足として記載していく。
頭背側へ位置し、首の付け根に右母指を当てて、他の4指は頸部を下からすくうようにホールドする(頸部は揉捏する際に不安定なので、このようにホールドすることで安定性がグッと増す)。
で、左手母指を右手へ重ね(重ね母指)、4指はフワッと鎖骨に当たる様にする(左手4指を強く握ってしまうと不快なので注意すること!!)。
「重ね母指」の両母指は「ハの字」になるように当てる。
『あん摩』の場合は、そこから「線状に漸増漸減」「輪状に漸増漸減」「普通に輪状」でも良い(指圧は普通に圧すればOK)。
一方で「長生」や「生井先生の揉捏」は「(漸増漸減というよりは)しっかりと圧を加えた状態での揉捏」が特徴なので覚えておく。
この手技は「長生の伏臥位頸部アプローチ別法」や「長生の側臥位頸部アプローチ」や「包丁研ぎ」と類似しており、(横断ではなく)縦断揉捏マッサージ」となるため、全て同じ方法として覚える。
菅沼さんも言っていたが、頸椎を走行している筋群は「当尾側」なので、首根っこを掴んで「腹背側」へ動かす操作だと筋肉を切ってしまうからNGだとか。
そういう意味でも、この方法はおススメ。長生きるでは「椎間を開く」という目的を持っており、その結果として振幅が加わる(振幅は目的ではなく結果)。
この際の「椎間を開くための頸椎長軸方向への刺激」は非常にソフトで構わないし、振幅範囲も狭いので(めまいなどを発症していない患者であれば)不調を起こさせることなく使うことが出来る。「いた気持よいくらい強くしてやろう」という意気込みよりも「弱い刺激でチョコチョコ椎間離開してあげて眠ってもらおう」という気持ちでやると効果的だと左近先生は語る(もちろん、生井先生は比較的ガシガシと揉捏するので、目的によってはそれもアリだが)。
前述した手技も含めて「頸椎2線母指揉捏」は生井先生のあん摩マッサージ授業で学んだ「頸椎揉捏法」とほぼ同じ。なので、そちらの手技も参考になる。
長生授業で「昔は包丁研ぎもやっていた」と先生が紹介してくれたが、これも生井先生の授業で実施していたので以下の記事で参考にしてみてほしい。
⇒『側臥位あん摩ー頸部』
側頭部に対する「4指揉捏」と「両手手掌圧迫」
側頭部に対する4指揉捏
側頭部を中心に、六指紋の様に「4指の指腹」を当てて振幅するようにしごく。
側頭部と(側頭部+)前頭部に対する手掌圧迫
側頭部と(側頭部+)前頭部に「両手の手背」を当てて圧迫する(ほぐしの達人で「背臥位で側頭部をサンドして圧迫する」ようなイメージ)。
肩甲骨回し(同級生流)
同級生の肩甲骨回しの特徴は(長生の「肩甲骨挙上最終域付近で詰めながら回す」のと異なり)全ての範囲でエンドレンジまで動かす(例えば肩甲骨下制もエンドレンジまで動かす)のが特徴で、じっくりと動かすことによりストレッチ感もあり非常に気持ち良かった。
- 患者の「腹側胸肩部」を把握する手は、患者上肢を下からすくうように保持。
- そして、小嶋さんは頭尾側へエンド連時まで稼働させるように肩甲骨を可動させていた。
- 例えば、下制では僧帽筋・肩甲挙筋が伸張するくらいしっかりと可動!
- あるいは、挙上では上部の関節が詰まるくらいしっかりと可動!
さらには3次元的に胸郭のラインに合わせつつ外転・内転、外旋・内旋も十分に加味しながら操作していた。
同級生は、肩甲骨と胸郭を唯一繋いでいる「胸鎖関節」を視点に動かしているとのことであった。
また、上記を見ていた先生は「肩甲骨挙上位で詰めた状態でクルクルと回した方が気持ち良いのでは」とのことであった。
たしかに、上記の方法のほうが一般的であり、こちらを好む人も多いと感じる。
しかし今回、同級生から学んだ方法は(今までで受けた中で一番)肩甲骨全体がほぐれ、なおかる「初めて肩甲骨を動かされて気持ち良いと感じることのできた手技」だったので、臨機応変に活用していく。
実際、訪問リハビリでAさん・Bさんに施行すると、どちらも「気持ち良い」と声を出して回答していたことから、よっぽど気持ち良かったのだと感じる。
※Bさんは、自分でも動かそうとしてしまい「自動介助運動」となってしまっていたが、それでも「気持ち良い」と言いながら動かしていたのが印象的であった。
